モデルプレイヤーを学ぼう


尊敬する人の自伝を読み、同じようなことをしたいと思う。

その人の考え方や行動から学び、触発される。

チェスでも同じことができます。モデルプレイヤーを学ぶのは昔から勧められているアプローチの一つです。

前回の「モデルゲームを学ぼう」に続き、チェスの理解を深めるには良い勉強法な上、他の利点もあるので試してみてください。


モデルプレイヤーって何?

上手くなりたい分野であなたより深い理解を示し、良いパフォーマンスを出しているプレイヤーはモデルとなり得ます。

そのプレイヤーの棋譜を並べると、

  • 上手いところに気付ける
  • あなたのチェスで何が不足しているかに気付ける
  • あなたの理想とするスタイルが体現されているのを見られる
  • あなたより高いレベルでも、どういったところでつまずくこともあるかを学べる
  • 相手側の強いプランについても学び、その知識をあなたの試合で活かせる

など、学べることは多いです。


なぜ大事?

大事な棋譜並べの中でも、あなたの体現するチェスを指すようなプレイヤーを見つけたい。まず棋譜を並べるのも楽しいですし、目標とするような指し方なので自然と集中し、吸収したくなります。

こんな内容面での指針があると、試合中に「あの人だとここでどう指すだろう」などと勇気やインスピレーションをもらえたりします。


どういうプレイヤーをモデルにすべき?

  • 観戦する、並べるのが楽しい
  • モデルゲームを探していてよく出てきた
  • あなたと同じレパートリーを指す(白・黒どちらもだと言うことなし)
  • あなたと同じレパートリーで良いパフォーマンスを残している
  • あなたが上達したいエリアが上手い

などの基準を使って見つけられます。

最も大事なのは、そのプレイヤーのチェスを見るとやる気が湧いてくる、棋譜を並べてると私もこういう風に指したい!」と感じること。

学びたいモデルを見つけたら、2つのアプローチがあります。

  1. 量に集中する—そのプレイヤーの棋譜をたくさん、各試合はそれほど時間をかけずに並べ、典型的なアイディア、プラン、ピースの配置や中盤の流れを見る
  2. 質に集中する—そのプレイヤーの棋譜をじっくり考えながら、あなたが指しているかのように手を予想しながら並べる。手を比べ、そのプレイヤーが指し手の決断をした時に、どういうことを考えていたのかを突き止めようとする。これは多くのマスターやコーチが勧めるトレーニング法

どちらも効果的なアプローチと言えます。後者の方が遥かに集中力を費やしますが、試してみるのは大事!


私の経験

私もチェス人生を通して、モデルプレイヤーの棋譜を多く並べてきました。

  • 攻撃的なスタイルを持つ旧世界王者、Mikhail Tal
  • 1番好きなプレイヤー、Alexander Morozevich
  • ダイナミックに1.d4を指すShakhriyar Mamedyarov

棋譜集を読みまくったり、何ヶ月もの間じっくりと並べたりもしました。

新しい形を学んだり、レパートリーの特定の部分を深めようとする際には

  • その形を多く指している
  • 良いパフォーマンスを残している
  • スタイルが好きな

GMの棋譜をまとめ、並べています。

例えば、

  • 白でキングズインディアンアタックメインでSGMまでいったBassem Amin
  • レアで面白すぎるオープニングやチェスを指すVadim Zvjaginsev
  • クイーンズインディアンディフェンスのベテランでポジショナルに勝つMichael Adams

1人1人から違うことを学び、自分の中で伸ばしたいもの、改善したいもの、取り入れたいものを棋譜を通して、吸収しようとしました。

そういった特定のモデルプレイヤーの棋譜を集めたデータベースは、チェスベースで何十と作っています。


どこでどう見つける?

チェスベースという有料ソフトでは手順、レート、指された年やポーンの位置までも、詳細な検索もできて便利です。しかし、今はリチェスなどの無料サイトでも、モデルゲームだけでなくモデルプレイヤーも見つけられるようになりました。

例えばマスターズデータベースを試合が指された年でフィルタリングできますし、

リチェスデータベースではタイムレンジやレート帯でもフィルタリングできます。

そこから盤に手順を入れ、オープニング・局面検索をすることで好きなプレイヤーを見つけられたりします。例えば、気になるマスターのリチェスのハンドルを知っていれば(公開アカウントであれば「名前+Lichess」でググると見つけられます)、この横のタブのプレイヤーデータベースでもその人のレパートリーを参考にできます。

オンラインだと試合数が多いので、並べる棋譜をの面でこなすこともできます。

特定の序盤の変化や中盤の形やモチーフを学ぶのなら、Chessgames.comもおすすめ。ユーザーがまとめているコレクションの中からも検索できます。

解説付きの棋譜がまとめられている名局集もいつでもおすすめで、旧世界王者の棋譜をまとめた本は多いのでそこから始めるのも良いでしょう。モデルとなるプレイヤーも見つけられるかもしれません。


モデルプレイヤーを学び始めよう

モデルと言えるようなプレイヤーがまだいなくても、質の高い棋譜を並べるのはタクティクスや読みのトレーニング同様、日常的にチェスのルーティンに取り入れたいものだと思います。

ビビっと来た棋譜を見つけたら、すぐにリチェスの研究に加えましょう。定期的に見返してみると、同じプレイヤーのものを何試合も保存しているかもしれません。そして、あなたがどういう棋譜を好んでいるかを見れば理想的なチェスについても分かりますし、どういうプレイヤーを見つけたいのかのヒントになるかもしれません。

モデルプレイヤーはすでに数十年前に亡くなっている人かもしれません。「こんなチェスを指したい」と思わせてくれるようなプレイヤーを見つけられると、目標や指針となり、あなたのチェス人生に想像以上の潤いを与えてくれます。


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