モデルゲームを学ぼう


こんにちは!

今回のテーマは「モデルゲームを学ぼう」。

序盤と中盤の理解を深めるにはこれ」と言えるような勉強法なので、ぜひ試してみてください。


モデルゲームって何?

モデルゲームとは

特定の序盤や中盤の形において典型的なプランやアイディアが指された模範的なゲーム

を指します。

モデルゲームを集めて学ぶと、

  • あなたの試合をこの質の高い例と比べられる
  • あなたの試合でも使えるプランやアイディアを学べる
  • 両サイドの戦略や注意すべきものをより意識しやすくなる
  • 暗記よりも1手1手の意味に集中することで理解を深められる

などのメリットがあります。


なぜ大事?

ここ5年ほどでは特に、序盤についてのコース、データベースや本の数も急増し、「学びやすい」「深めやすい」と思えます。

しかし、「強い手順」を見つけ、それを頭に入れようとするのはしやすくなりましたが、試合となると話は変わります。

学んだ手順は自信を持って指せるけど、知識が終わる局面の先は理解していなくて、どう指すべきか分からない。そんな方も多いのではないでしょうか?

序盤は学びやすくなったかもしれませんが、深めるのは

  • 実戦
  • 振り返り
  • モデルゲームを学ぶ

などをこなさないと難しいのは10年や20年前と変わりません。


GMの共通するアドバイス

ここで、コーチとしても名高い3人のグランドマスターの言葉を引用します。

GM Moulthun Ly

私はモデルゲームステムゲームをたくさん見る傾向を持っています。GMレベルに到達するためには、それぞれの変化について少なくとも、5つのモデルゲームを学んである必要があると思います。
そうすると、その枝道をとても深く理解できます。特に、それらをとても深く学んでいれば。それは、大半の対戦相手が行っている以上のレベルになることが多いと言えます。
ですので多くのモデルゲームを見つけ、それらを深く、詳しく分析する。そうすると、ただ手順を暗記するより、あなたの力になるはずだと思います。

GM Davorin Kuljasevic

序盤について情報をどこから仕入れるとしても、鍵となるいくつかの変化といくつかのモデルゲームを簡易なファイルにまとめるのをまず勧めます。

GM Max Illingworth(投稿、「チェサブル世代との戦い方」より)

変化の中で十分なモデルゲームを理解していれば、相手のプレパが終わった途端、アウトプレー(打ち負かすことが)できます。
レート2200未満のプレイヤーなら、相手より局面を深く理解するには5つのモデルゲームで十分と言えるでしょう。

どこでどう見つける?

詳細な検索ができるのはやはりチェスベース (ChessBase)で、手順・局面・レーティング・タイムレンジ・ポーンの配置などでも試合をフィルタリングできます。しかしチェスベースは有料ソフトで、今は他のサイトでも十分にモデルゲームを探せると言えると思います。

本やコースで特定の序盤や中盤が扱われると解説付きのモデルゲームの棋譜が含まれていることも多い。例えば、GM RiosChess Structuresは主要なポーンストラクチャーを扱ったおすすめの一冊で、それぞれのストラクチャーの章にモデルゲームが含まれています。

無料リソースではやはりリチェスがおすすめ。データベース(DB)機能を使えば特定の序盤の手順を調べて、マスターズDBから良い棋譜を見つけられます。また、リチェスDBだとサイト上で指された試合を検索できます。ここで例えばラピッド以上の、持ち時間の長い試合でフィルタリングし、あなたより少しレートが高いレンジを設定すると、参考になるモデルゲームが見つけやすいと思います。

マスターズデータベースと比べると、特にブリッツも含むと、リチェスDBでは短手数の(例えば、25手以内で終わった)試合の棋譜も多く見つけられます。ある手順で白と黒、それぞれが25手以内で勝った(または負けた)試合を並べていくと、典型的な勝ちパターン、ミスや効果的なプランを見つけられるのでおすすめ(リチェスDBについてはこちらの動画をどうぞ)。

良い棋譜を見つけるにはchessgames.comもおすすめ。ユーザーがテーマに沿ってまとめたコレクション(棋譜集)が4万近くもあるので、例えば気になる変化、モチーフやアイディアで検索できます


私の経験

私は若い時、序盤を嫌っていました。手順を「暗記」するのなんてしたくない、そんなことに時間をかけるより実戦、タクティクスや読み、中終盤の勉強とトレーニングをしたいと思っていました。

今思うと、序盤と中盤をつなげて学ぶ、序盤の理解を深めることで中盤も強くなれるということが理解できていませんでした。モデルゲーム、そしてその重要性を知っていれば、より早い段階で序中盤の勉強に興味を持ち、チェスのそのエリアも深められていたと思います。

ここ何年かは、モデルゲームモデルプレイヤーの棋譜並べを多くしています。モデルプレイヤーについてはまた別のメールで書きます。

例えば序盤の本やコースを購入し、手順を学び、暗記をするのはハードルが下がりました。実戦を通して深めることもできますが、すでにその序盤や中盤で指されているモデルゲームを学び、自分の試合以外からも学ぶのがベストかと思います。

自分の指す試合だけでは感覚に頼る部分が大きく、なかなか1手1手の意味を理解し、

  • 原則
  • 戦略
  • プラン
  • お互いの狙い

という、汎用性のある本質的な部分は吸収しにくいと感じます。


モデルゲームを学び始めよう

序盤の質・知識を上げ、理解を深めるにはファイルを作るのがおすすめですが、モデルゲームを見つけ、学ぶことも同じように大事だと思います。

棋譜をたくさん見つけてそれらを素早く並べるより、貴重なアイディアが詰まっている1つのモデルゲームを見つけ、何度も並べ、自分で解説文を付ける方が深く学べることが多いでしょう。

特定の序盤でも、特定のポーンストラクチャーの中盤でも、エンドゲームでも、モデルゲームを学ぶことで理解を深められます。

すると、以前は「新しい知識」だったものも、チェスの試合をする中で、慣れ親しんだものになります。

ここの音は私にとって新しく、聞き慣れないものだった。
それらが浮かび上がってくるリズムもまた然り。
だが、じきに慣れてしまうだろう。
慣れすぎて、再び背景のざわめきへと溶けてゆくに違いない。
知らなさすぎると、それは存在しない。
知りすぎても、それは存在しない。
Karl Ove Knausgård, A Death in the Family (My Struggle, Volume 1)(拙訳)

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