なぜチェスで考えすぎてしまうのか(そして、どうすれば止められるか)


もし、チェスにおける考えすぎのほとんどは、知識や読みとは関係なく、恐れが原因だと言ったらどう思いますか?

私はそれに気づくまでに25年かかりました。私が考えすぎるのは、自分を信頼していないからでした。最善手を見つけようと頑張りすぎて時間を使っていたのではありません。怖かったから、時間を使っていたのです。

こんな感覚、ありませんか。何度も確認した変化があるのに、手が駒の上で止まり、最後にもう一度だけと確認して、またさらに10分が消えていく。

この記事では、チェスにおける考えすぎの大半を引き起こす3つの恐れ、それが対局の中でどう現れるか、そしてそれぞれを解消するために何を変えればいいかについて書きました。

読み終える頃には、あなたの考えすぎの原因がどの恐れなのか、そして今日から何をすればいいのかが分かるはずです。

では、始めましょう。


1つ目の原因:完璧主義

完璧主義というと、良いことのように聞こえます。ゲームに真剣に向き合っていて、責任感があるように聞こえます。でも実際には、完全に確信が持てるまで指すのを拒否する、という形で現れます。

問題は、チェスのほとんどの局面では、確実性など存在しないということです。完璧な明確さを待っていたら、永遠に待つことになります。

私が指した対局の例を挙げます。

相手が11.Nb5と指したあと、私はすぐにこの変化に惹かれました。11…axb4、白は12.Nxd6+ cxd6 13.axb4と指さざるを得ない。このあと、13…Rxa1+ 14.Bxa1 そして14…Qa8というのが気に入っていました。

15.O-Oのあと、私には2つの選択肢があります。15…Bxf3 16.Qxf3 Qxf3と進んで、2つのナイト、より良いポーン構造 対 2つのビショップ、というエンドゲームに入るか。あるいは、単にキャスリングするか。

自信のあるプレイヤーなら、最初の数手は素早く指して、そのあとでどちらに進むかを考えたでしょう。

ところが私は、自分を疑い始め、どんどん深く潜っていきました。10手後に起こるかもしれないエンドゲームを自分が勝てるだろうか、と心配し始めたのです。11手目の時点では、まったく非現実的な心配でした。

90分の対局で、私はここで20分以上使いました。結局、その決断自体を避けて、「安全な」手、11…Be7を指しました。序盤から中盤の早い段階ですでに持ち時間が少なくなり、時間切迫に陥り、痛い負けとなりました。


ここから学んだのは、チェスで完璧を目指すと、自分への信頼は縮んでいくということです。自分が興味を持てる手を指さなくなり、責任を避けるようになります。

安全な手を指すのは、それが最善だからではなく、感情的に自分を守ってくれるからです。でも、そうすることでさらに疑いが生まれます。次の対局では、さらに考えすぎるようになります。

では、完璧主義にはどう対処すればいいのでしょうか。

まず、本当に指したい手があって、それが妥当に見えるなら、指してください。ちゃんと考えて、筋が通っているなら、それが直感を鍛える方法です。その手を指してみることこそが、自分の直感が正しい方向を向いているかどうかを学ぶ方法なのです。

次に、局面がそれほど重要でなく、強制手順もないなら、時間制限を決めて、決断してください。時間は、本当に対局を決める場面のために取っておきましょう。ほとんどの局面は、その瞬間には重要に感じられても、実際にはそれほど重要ではありません。


2つ目の原因:ミスを恐れる気持ち

数千年前、森の中で物音がすれば、それは危険を意味しました。あなたの脳は、熊に食べられるのではないかと考えて、ためらうことを学びました。今、あなたはチェス盤の前に座り、緊迫した局面で手を指そうとしていますが、体は同じように反応します。

多くのプレイヤーは、最善手を見つけたいから考えすぎるのだと思っています。でも実際には、間違っているかもしれない手を選ぶのが怖いから、考えすぎているのです。ミスをしたときに自分がどう見られるかを心配しています。学ぶことよりも、よく見られることの方が大事になってしまっているのです。

これも、前述の対局の翌日に指した対局の例です。

私はエクスチェンジ(ルーク対マイナーピース)分、駒得していて、一番シンプルなのは36…Qh4+でクイーンを交換することでした。駒得してるからクイーン交換、エンドゲームを勝ちきる。でも1秒1秒と時間が少なくなる中で、私は幻を見始めました。37.Qxh4 Nxh4のあと、38.Bg5 Ng6 39.exd4 exd4 40.Nf5が見えたのです。

dポーンを守れないと思い込み、パニックになりました。

だからクイーンを交換する代わりに、36…dxe3を指しました。持ち時間が少ないとき、恐れが代わりに選んでしまいます。そして37.Bg5のあと、もう簡略化することはできなくなりました。

37…Qc6 38.Nf5のあと、私は時間切れで負けました。

実際には、36…Qh4+でクイーンを交換しても、まだ勝勢でした。そして実戦的にも、持ち時間が少ないときは、クイーンが盤上からなくなった方がずっと指しやすかったはずです。でも私の心のどこかが、何かを見落として間抜けに見えることを避けたがっていたのです。

これは、多くのプレイヤーが認めたがらないことです。時間切迫で負けることは、明確なミスで負けることよりも、安全に感じられることがよくあります。「勝っていたんだけど……時間がなくなってブランダーした」と言うことは、自分のエゴを守ってくれます。

ミスを恐れる気持ちが慢性的な考えすぎにつながるとき、それは致命的になります。

では、この恐れにはどう対処すればいいのでしょうか。

まず、最近の真剣な対局を見返してください。自分と相手が犯したミスに印をつけます。特に、自分と同じくらいのレベルの相手との対局で。もし相手のミスは妥当だと思うのに、自分のミスには嫌悪感を覚えるなら、あなたのエゴが邪魔をしています。

次に、ミスを分析するときは、手だけを見ないでください。なぜそれが起きたのかを問いかけます。そしてさらに、なぜ、と問いかけます。それを続けていくと、やがて自分が好きではない答えにたどり着きます。それがたいてい、本当の答えです。


3つ目の原因:負けることへの恐れ

これは、チェスにおける最も深い恐れです。

格上の相手に対して良い局面なのに、そのほうが安全に感じるからとドローを受け入れてしまう。駒得をして早すぎる段階で気を緩め、相手が反撃してきたらパニックになる。あるいは、五分五分の決断を迫られて、直感は勇敢な手を指せと言っているのに、受け身の選択肢を選んでしまう。

私は、これらのすべてを何度もやってきました。そして、10年経ってもそのときの感情を覚えているのは、そういう体験が一層、自信のなさを感じさせたからです。

自信がないとき、一局負けることは、人間として失格したかのように感じられます。だから、レーティングや承認、楽な勝利、コントロールを追い求めます。リスクや困難、不確実さを避けるようになります。

多くのプレイヤーが、何年もの間、結果に取り憑かれます。負けるたびに強い痛みを感じ、上達しようとさらに頑張り、そのサイクルを繰り返します。それが間違っていると言っているわけではありません。でも私の場合は、何年もたって、結果と上達に取り憑かれるそのサイクルに疲れ果ててしまいました。

「上達」は健全な目標のように聞こえますが、自分の価値が目に見える進歩に依存しているとき、それもまた罠になりえます。レーティングが停滞していると気づくと、恐れが戻ってきます。


私をようやく助けてくれたのは、自信の土台を変えることでした。

結果は不安定です。完全にはコントロールできません。

一方で、学びはコントロールできるものです。

なぜなら、考えてみると、上達とは

  • すでに知っていることをもっとうまくできるようになること
  • 新しいことをできるようになること
  • うまくいかないと分かったことを、やらなくなること

だからです。

つまり、学びが上達につながります。上達は、さらに多くを学べる対局を指すことにつながります。でも、結果を最優先にしたり、あるいは上達そのものを最優先にしたりすると、この流れを断ち切ってしまいます。

学びが基準になると、すべての対局に価値が生まれます。勝ちも負けも、あなたを定義しなくなります。それでも競い、一生懸命トレーニングし、高みを目指すことはできます。でも、悪い結果が、もう自分は十分ではないということを意味しなくなるのです。

そして、自信はレーティングから生まれるのではありません。自分自身との約束を守ることから生まれます。

自分との約束を守らないでいると、自分のためではなく、他人のために演じ始めてしまいます。それが不安を生み、不安が考えすぎを生みます。

ここで、実践的な最初の一歩を提示します。

自分のチェスの中で、取り組むべきだと分かっているのに避けてきた部分を、ひとつ書き出してください。30分のタイマーをセットして、それだけに取り組みます。今日、やってみてください。そして寝る前に、明日の最重要タスクを書き出しましょう。

自信は、考えることからではなく、行動から育ちます。

以上が、チェスにおける考えすぎ、恐れ、学び、そして自信について、私が25年かけて学んだことです。

恐れから身を守ろうとすることは、いつか必ずその恐れに打ち負かされるのを確実にするだけだ。恐れは、正面から向き合わなければならない。
―― ジェームズ・ボールドウィン『The Fire Next Time』

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サムネ画像:Vadim Bogulov​


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