失礼なデート相手と、あなたの直近の敗戦


「これまでいろんな女性とデートのようなことをしてきたが」とその男はそう言った。
「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」

村上春樹の新作小説『夏帆─The Tale of KAHO─』(新潮社)は、この一文から始まります。

夏帆は絵本を描いている、ごく普通の若い女性です。ブラインドデートに出かけた彼女は、こんな残酷な言葉を浴びせられます。

でも彼女は、怒ったり傷ついたりしてその場を立ち去ったりはしません。一瞬その考えがよぎったとしても。彼女はむしろ興味を持ちます。なぜこの人はこんなことを言うのだろうと、その侮辱を頭の中で転がしてみるのです。本当に私はそんなに不細工なんだろうか? 彼は次に何を言うつもりなんだろう?

見知らぬ人から投げつけられた、これまでで一番心ない言葉を、彼女は理解する価値のあるパズルとして扱うのです。


踏んだり蹴ったり

チェスで負けたとき、それはまるで侮辱のように感じられることがあります。

その敗北はとても個人的なものに感じられ、まるで自分のチェスの、そしてなぜか人格そのものの欠点までもが、魂の一番深いところから引きずり出されて、大会会場中(あるいはネット上)に晒されているような気がしてきます。

そしてそうなると、無意識に防御的な考えが出てきます。あいつは運が良かっただけだ。自分は疲れていた。本当は勝っていたはずだ。あのオープニングは熟知しているのに、手順を間違えただけだ。

そのひとつひとつが、対局を直視して記憶に刻むことを避けるために、あなたが閉めてしまう小さな扉です。

長年、負けたあとの私の最初の行動は、自分を正当化することでした。そして、自分を正当化するのに忙しいプレイヤーは、何も学ぶことができません。


臭い物に蓋をしない

悪い対局のあと、メンタル面をうまく扱うのは、私たちの多くにとって難しいことです。

敗北は、自分のチェスについて何か心ないことを語りかけてきます。そしてエゴが、きちんと見る前に「しっ……見ないで」とささやきながら、私たちの目を覆ってしまいます。私たちは言い訳をし、運がなかっただけだと自分に言い聞かせ、面目を保ったまま(なぜかそれ以前よりずっと脆く感じられるにもかかわらず)その場を去ります。それは自分を守っているように感じられますが、実際にはただその場に留まっているだけです。

夏帆の反応こそ、私たちが正しい方向へ歩き出す助けになるものです。厳しい審判をひるまずに受け止め、それに興味を持つ。負けたにもかかわらずどう気分を良くするかを問うのをやめて、それが実際に何を伝えようとしているのか、なぜそれが繰り返し起きるのかを問い始めるのです。

その好奇心こそが、いわばスーパーパワーです。そして同時に、身につけるのが一番難しい習慣でもあります。なぜならそれは、自分が一番見たくないと思っている、自分のチェスの部分にこそ興味を持つことを求めてくるからです。


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その好奇心を、毎回の真剣な対局のあとに、冷静に、意図的に行う習慣へと変えたことは、私自身のチェスと自信における最大の変化のひとつになりました。それは、今日公開したコースの核にある考え方でもあります。

「10の習慣 チェス上達システム(The 10-Habit Chess Improvement System)」は、真剣に対局し、しっかり勉強もしているのに、何に取り組めばいいのか分からずにいるプレイヤーのための動画コースです。全12章、つながり合う10の習慣を通じて、自分自身の対局を、明確な教訓、的を絞った練習、そして次の対局でのより良い判断へとつなげていきます。

このコースは英語で提供されているため、普段から英語のチェスコンテンツに親しんでいる方に向けたものです。もし当てはまるようでしたら、こちらからご覧いただけます。


向かいに座った男は、夏帆を傷つけるつもりでその言葉を口にしました。でも彼女がそれを「傷つき」ではなく「好奇心」で受け止めたことで、その侮辱は、彼女にとって久しぶりに一番面白い出来事に変わりました。

もしあなたが、夏帆が彼を見つめたのと同じように自分の負けを見つめる覚悟があるなら、あなたの敗北も同じことをしてくれるはずです。

もし誰かが私の考えや行動の誤りを証明し、示してくれるなら、私は喜んでそれを改めよう。私が求めているのは真実であり、それは誰も傷つけたことがない。害になるのは、自己欺瞞と無知の中に留まり続けることだ。
―― マルクス・アウレーリウス『自省録』

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