本気度の高い試合を指そう


本気度の高い試合を指そう

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今回伝えたいテーマは「本気度の高い試合を指そう」です。

いくつかの配信で「最近、この言葉を使うのが多いな」と感じたのでこちらでまとめようと思いました。


チェスの上達を目指す中でもちろん、実戦は欠かせません。

いくら

  • 動画を観ても
  • 本を読んでも
  • 問題を解いても、

試合をしなければそのインプットや練習を実力につなげにくいです。

その中でも、本気度の高い試合が特に大事です。

真剣勝負ほど、

  • 実力がはっきり出る
  • 相手も本気なので試合の質も高い
  • 不安や緊張との向き合い方も鍛えられる
  • 学んでいた定跡やプランを試す甲斐がある

など、利点が多いです。


この文章を読んでいるあなたは、

  • オンラインチェスの経験しかない方、もしくは
  • OTB(Over the board、対面)チェスの経験もある方かと思います。

OTBチェスの方が没入感が高く、PCやスマホの画面上でピース(駒)を操作するよりも実際にその場に出向き、五感を使うことで、全身全霊をもって戦うという感覚を持てると私は感じます(その分、負けもさらに堪えますが...)。

OTBプレイヤーはオンラインを「OTBに向けての練習」と感じるのに対し、オンラインプレイヤーにとってはオンラインの大会やマッチが1番の本番かもしれません。

※FIDE戦 = 国際チェス連盟FIDEが認可する大会で行われる国際公式戦

レート戦 = 実力を数値化して表す「レート」 を競い合う対戦

あなたがOTBプレイヤーでもオンラインプレイヤーでも、できるだけ本気度の高い試合を指すと良いです。

そういう試合ほど

  • 始めるハードルが高く
  • 負けはとにかく悔しく
  • 試すのが怖いかもしれませんが、

1つ1つの試合から吸収できるものも多いので、上達を目指しているのなら「今より本気度の高い試合を指せる場はあるだろうか」と考えてみましょう(もちろん、カジュアルにチェスを楽しみたい方も全然OKです)。


私の経験

私のチェス人生においても、「本気度の高い試合」を多く指すことで上達できたと確信を持っています。

オーストラリアで生まれ育った私は子どもの頃からOTBクラシカル(各プレイヤー、1時間や1時間半などの持ち時間が長い試合)を頻繁に指せる環境にいました。

指した試合の棋譜は2001年からパソコンにまとめているのですが、公式戦は今まで1,600試合以上指しています(うち、FIDE戦も1,000試合近く)。24年にわたり、毎年約70試合です。

  • 前回の大会から学んだもの
  • 大会後に取り組んだ練習や学んだスキル

を濃い実戦に常に投入できたおかげで、実力を伸ばすのに大事な

インプット→アウトプット→フィードバック

のサイクルを回しやすい環境でした。

日本でもインターナショナルマスターの称号を獲得したプレイヤーが何人かいますが、彼らも1番本気度の高い実戦の場であるFIDE戦(国際公式戦)を何百試合以上も指しています。マスターを目指している方は特に、できる限りFIDE戦に参加するのは不可欠です。


実戦の質

実戦においても量×質が大事ですが、この場合、「質」というのは「本気度の高さ」。集中していない状態で指す何十というオンラインの早指しの試合より、OTBで全力で指す1試合の方が得られる経験値は高いと私は信じています。

真剣勝負ほど「次の大会/マッチに向けて」というモチベが出るので練習や振り返りにも身が入ります。

例えば毎日同じレート戦を指すのも良いですが、知り合いとのトレーニングマッチやオンライン大会への参加も定期的に設けると、真剣勝負の経験値やそれがもたらすメリハリの恩恵を感じられるはずです。

オンラインだと、例えばチェスコムもしくはリチェスのどちらかを「真剣勝負の場」と決めて使い分けるのも手です。例えば、

  • リチェスで試合をする時はスマホの通知もオフ、1日何試合までと決めて各試合、振り返りを行う
  • チェスコムでは新しいものを試して楽しむ、もう少しカジュアルに指す、タクティクスやレッスンをこなす、などと試せます。

どう始めるか

毎日チェスに時間をかけていても、比較的カジュアルな試合しか指していないと、1試合1試合から吸収できるものが少ないかもしれません。

OTBを始める場合は、すぐ大会に出るのはハードルが高いのでまずはチェスクラブに足を運んでみる、対面でまず誰かと指してみる、で始めるといいかもしれません。

オンラインでも、大会に初めて出るのは怖いと思う人も多いでしょう。(2024年12月から定期的に、リチェスのクラブで日曜の午後に大会を開催しているので興味のある方はどうぞ)

もちろん、うまくいかないかもしれません。

でも、そういった1歩を踏み出すことでチェスの世界も広がり、真剣勝負を指すのに慣れていくとあなたのチェスも深まっていくはずです。

すでにOTBに参加している方も、次の大会を決めているとそれに向けて今日から何に取り組むべきかと、逆算して普段のルーティンも練りやすくなります。


あなたは普段のチェスで、「本気度の高い試合」を指していますか?


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